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秋が来た!と感じる事の一つに、水の音があります。いつものミネラルウォーターでもコップに注いだ時、響く音が違って聞こえませんか?透明感のある良い響きです。口に含んでみると甘く感じます。お茶も紅茶も、他の季節より一段とおいしく思うのは私だけでしょうか。
平安時代、薬草として飲まれていたお茶(煎茶)は歴史をつないで、私達の生活にすっかり溶け込みました。今はペットボトルのお茶が、簡易でとても便利です。ですが、この季節はどうぞお急須を使って、丁寧にお茶を淹れてみてください。基本的には玉露も煎茶もお番茶も、それぞれのお茶の種類に合わせてお茶の葉の量とお湯の温度に注意を払えば、お茶は美味しく淹れる事が出来ます。淹れ方は茶葉の外袋にも書いてありますし、ネットで調べても良いでしょう。 煎茶道での本格的な玉露の淹れ方をご紹介します。 玉露は専用の小さめのお急須や湯冷まし(ゆざまし)そしてお猪口位の大きさの玉露茶碗を使います。 ① 湯冷まし、お急須、お茶碗にお湯を注ぎます。湯冷ましには大体100cc程のお湯を入れます。(お急須やお茶碗にお湯を入れるのは器を温める為です) ② お急須のお湯を捨てます。そのお急須に茶匙2杯程の茶葉を入れます。煎茶道では茶合(ちゃごう)という道具を使い茶葉は茶入れから目分量で茶合に回し出しをしてお急須に入れます。 ③ 湯冷ましのお湯をお急須に入れます。大体温度は50度〜60度位です。煎茶道では、湯冷ましの底に指を当て温度の検討をつけます。(温かいと感じる温度が目安です) ④ 湯飲み茶碗の湯を捨て、お急須のお茶を湯飲み茶碗につぎ分けます。多くてもお茶碗の三分の一くらいのお茶の量です。 小さめのお急須を使うのは、茶葉がお湯を含み蒸らすのに効果的だからです。玉露とは濃厚なエキスを頂くものです。ガブガブと大量に飲むものではありません。玉露の飲み方は小さな玉露茶碗に数滴注がれたお茶を口に含み、舌で転がすようにして味わうのです。 煎茶の場合はご自宅で淹れやすいやり方を書きます。 ① 沸かしたお湯をお急須と煎茶茶碗に7〜8分目淹れます。お茶碗にお湯を淹れるのは、お湯の温度を冷ますだけではなく、お茶碗を温める事もでき一挙両得です。沸騰したお湯の温度を70度〜80度位まで冷まします。上煎茶の場合は湯冷ましを使いもっと温度を下げます。普通の煎茶はお茶碗の底に指先を当ててみて少し熱いと感じるくらいの温度だと思ってください。 ② お急須のお湯を捨てます。お急須に茶葉(一人に小匙1杯くらい)をいれ、お茶碗で少し冷ましたお湯を入れます。 ③ お急須のお茶を茶碗につぎ分けます。お茶は一度で出し切って下さい。お茶を残しておくと二煎目を美味しく淹れられません。 番茶は食事の後などに飲むとさっぱりとして美味しいものです。 さて、番茶の淹れ方ですが、お急須もお湯呑み茶碗も大きめのものを使います。食後などには特にたっぷり頂きたいからです。番茶はお湯飲みに八分目から九分目淹れます。茶葉は一人あたり小匙山一杯くらい使います。お湯は熱い沸かしたてを使います。コツと言えば、さっと手早く待たずに淹れると言う事です。お茶がどんどん濃くなるからです。寒くなったらお急須や土瓶、お湯飲みも先に温めておいて下さい。熱々をフーフー言いながら頂くのは良いものです。古くなった番茶は弱火で小鍋で焙じてほうじ茶にして飲むと美味しいものです。私は子供が小さい頃、毎晩夕食後に番茶を焙じて飲ませていました。 お茶を美味しく注ぐコツをお教えします。 まず自分のお茶碗に少しだけ淹れて色を見ます。次にお茶碗の中で煎茶道では正客(主賓となる人)と言いますが、上司やお客様、ご年配の方、先輩、ご主人などのお茶碗に淹れてから順番に色と分量を見ながら注いで行きます。 ちょっとお茶の色が薄いようでしたらゆっくりと、色が濃いようでしたら手早く注ぎ分けます。そして全体が均一のお茶の色や分量になるよう心がけます。 また良いお茶の葉でぬるめのお湯を使わなければならないのに、お湯の温度が熱かった場合には、お湯を高い位置から細く出しながら(その間にお湯が少し冷めます)お急須に注ぎます。その時は丹田(おへその下辺りです)に力を入れて、お湯を急須に入れるとブレずに細く注ぐ事が出来ます。 お茶を更に美味しく淹れるコツは、と尋ねられたら、私は「愛情」と答えます。 ペットボトルでは難しいでしょうが、気持ちを込めて、「愛情、愛情」と心の中で呟きながら、時間を要するお茶にはゆっくりゆっくり翡翠色のお茶を注いで見てください。お茶と対話をしながらとでも言うのでしょうか。 あなたの心のこもったお茶は、きっと召し上がる方のお心に響く飲み物になるでしょう。
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日本には自然を尊ぶ伝統があります。そのような自然を愛でる行事のひとつに「観月会」(お月見)があります。今年の「中秋の名月」は9月25日ですが、実際の「満月」は9月27日になります。このように違うのは「中秋の名月」が昔の旧暦(太陽太陰暦)の8月15日と決められているのに対し、「満月」は天文学的な関係、つまり太陽を中心とした地球、月の位置関係、月の満ち欠けで決められるからです。
この日の夜には有名なお寺や神社では「観月会」が開かれます。「観月会」とは旧暦8月15日の「中秋の名月」や旧暦9月13日に当たる「十三夜」(今年は10月23日)に輝く月を眺めて楽しむために開かれる行事の事です。平安時代に伝わったこの行事、中国・唐の時代の「中秋節(ちゅうしゅうせつ)」に端を発します。日本では、貴族が月を愛でながら和歌や雅楽を楽しむ宴として催したとされます。その伝統が今に至るまで継承され、農村の収穫祭などと結びつき、庶民の行事「お月見」になっていったのです。この日、神社などでは神事の後に伝統芸能の奉納や茶会などが開かれるところもあります。夜間の文化財公開などもあります。 このように、「中秋の名月」は旧暦8月15日のこの日を言います。しかし、昨今は年に15〜16回ある満月の「十五夜」と「中秋の名月」が同じように使われているようです。一般的に「十五夜」と言えば「お月見」という具合に思い起こされます。「十五夜」は別名「芋名月」とも言われます。一方、一ヶ月後の「十三夜」は日本独自の「後の月」(のちのつき)という行事です。こちらは「栗名月」とか「豆名月」と言われます。どちらも秋の収穫に対する感謝の意味が込められています。ついでに今年の十日夜(とおかんや)は11月18日になります。冬の足音が聞こえるこの時期のお月見は、一年の収穫に感謝を捧げる最後の「お月見」と言えます。この三つのお月見を「三月見(さんつきみ)」と言い、晴れて全ての月見が出来ると、縁起が良いとされます。 この「お月見」の行事は日本では広く家庭のイベントとしても行われてきました。私は子供の頃、縁側に机を出し、その上にススキや菊の花を飾り三方に母の手作りのお団子を乗せてお月様にお供えした事を覚えています。虫の声を聴きながら、煌々と輝くお月様を家族揃って眺めました。長じてお茶を教えていた私は毎年、この時期に「お月見の会」を開いてきました。お弟子さんと共にお月様にお茶を供えて、その神秘の光に撃たれました。もちろん今でも家族でこのイベントを大切にしております。 世の中が益々タイトになってきたと感じます。インターネットの発達と共に多くの知識を得る事で世界が広がったと思う事もあります。でも心の中はどうでしょう。満たされた日々を過ごされていますか。一見何でもない事に思えるでしょうが、「お月様を観る」、たったこれだけの事ができないのが現代ではないのでしょうか。夜道を歩きながら、あるいは自宅の窓辺から空を見上げて、慈愛に溢れた光を身体で感じてみませんか。 お煎茶やお抹茶を中心としたカフェが生まれ、好みのお茶やお抹茶でスイーツを楽しむ風潮が生まれたのはここ15年から20年といったところでしょうか。
日本の戦国時代から安土桃山時代にかけて「わび茶」を完成させたのは利休居士(りきゅうこじ)ですが、その伝統は「茶道」として今も受け継がれています。 お煎茶は平安時代の頃、薬草として用いられ、これを「煎茶道」にまで発展させ楽しんでいたのは、江戸時代の頼山陽(らいさんよう)などの文人墨客だったと言います。 お抹茶の世界は、お茶の点て方やお茶事における作法だけでなく、全てのお道具に歴史があり、学べば学ぶ程その奥深さは素晴らしく、興味の尽きないものです。習い始めた20代の頃の私は、お抹茶のお稽古の日はお弁当持参で、終日先生のお宅で勉強させて頂いておりました。 しかし、当時私の家に茶室はなく、通常のお床のある日本建築の家に住まっていましたので、それに沿った「礼儀作法」も知りたいと思うようになりました。「礼法」や「煎茶道」を学ぼうと思ったのにはそう言う動機があったのです。 私が教えを乞うた当時の「煎茶道」の宗匠は、暮らしの中にこそお茶があると「暮らしの中のお茶」を提唱していらっしゃいました。 私はお煎茶の美味しい淹れ方や礼儀作法を学び、和室のある暮らしに役立てよう、また、お抹茶の美味しい点て方を習得し、家族に楽しんでもらおうと思いました。 お抹茶のお茶事で使われる茶道具には歴史のある素晴らしいものが多く、器やお道具を見る目を養います。博物館に行っても予備知識があれば楽しみ方も違います。私は数十年前になりますが、イギリスを旅した際、ロンドンのヴィクトリア・アンド・アルバート博物館で日本の茶道具を一堂に集めたフロアを見て回りました。そこで、日本では見たことのない不思議な形の茶入れを見て、もっと造詣を深くしたいものだ、と思った事でした。 その様にお抹茶の世界の素晴らしさに感激する一方、お煎茶ではまさに暮らしに密着する煎茶・玉露・番茶の美味しい淹れ方や茶器やお盆と言った暮らしにあるお道具の扱い方、お食事の仕方、果ては仲人(縁談や結婚式の仲立ちをする人の事)のやり方まで学んでいきました。私には両方とも価値のある習い事でした。 食事の後や一息入れる時、お煎茶やお番茶で美味しいお味のお茶を淹れられるのは、心をこめて淹れた回数かもしれません。 お抹茶も同じです。習いたての頃、「点て出し」(たてだし)の手伝いを先生に命じられ何十杯ものお茶を点てました。そのお陰で早くからコツを習得することが出来ました。 家では上生菓子や薯蕷饅頭がある時にはお抹茶(薄茶)を点てて頂きます。娘達には、お煎茶の淹れ方だけではなく、お薄を美味しく点てるちょっとしたコツやお菓子を菓子鉢から取る時の作法、懐子の使い方など教えています。お抹茶の世界も暮らしに溶け込んで、初めて活かされると思うからです。 9月9日は「重陽の節句(ちょうようのせっく)」です。
起源は中国にあります。中国では奇数は縁起の良い陽(よう)とされ、3月3日、5月5日、7月7日など奇数の重なる日は、幸多い日と考えました。なかでも、一番大きい陽の数の9が重なるのが9月9日です。これをを「重陽(ちょうよう)」と呼び「菊の節句」として日本に伝わりました。その一方で、奇数が重なると不吉だという考えもあり、その邪気を払うためにこの風習が根付いたとも言われます。 ところで、中国では古くから「菊」は、様々な薬効を持つものとして知られていました。4世紀の中国の書物には、菊の群生している谷から下った水を飲んだ村人たちが「長寿」だった、と記されています。この伝説は平安時代の貴族にもたらされ、日本の行事の中に定着して行ったのです。 「重陽の節句」にはただ菊を鑑賞するだけではなく、さまざまな風習を作って楽しんだと言われます。いくつかご紹介します。 「菊合わせ」…現在でも全国で「菊花展」として10月頃から開催されていますが、 昔は菊を歌った和歌を競い、また菊の美しさを競わせる「品評会」を開いていました。 「菊の被綿(きせわた)」…庭の菊の花に綿(わた)をかぶせて一晩、綿に菊の香り のする夜露をたっぷり染み込ませます。翌朝この夜露を含んだ綿で肌を拭いて、健康や長寿を願う風習です。被せる綿は色付きで赤い菊には白い綿、白い菊には黄色、黄色の菊には赤色の綿を被せたと言われます。 「菊酒」…平安時代に宮中で行われた「菊の宴」ではお酒の杯に菊の花を浮かべて薬 効ある香りと共に味わったと伝えられています。現在でも菊の花をグラスに浮かべて 「菊酒」を味わう人もいます。 「菊湯」・「菊枕」…湯船に菊の花を浮かべて入浴したり、菊の花のポプリを枕に入れたりすることで、美容や健康を願ったそうです。菊湯に使用した菊は「リュウノウ菊」と言う野生の原種菊です。 「和菓子」・「菊料理」…今でもこの時期になると、和菓子屋では上生菓子には菊の花をかたどったものや菊にまつわる和菓子を作り、日本料理では菊を題材にした料理、食用菊を使った料理が作られます。 この時期に飾られる「後の雛(のちのひな)」とは何でしょう。 これは江戸時代に生まれた風習です。3月3日のひな祭りで飾った雛人形を出して、 今度は長寿の願いを込めて飾ると言うものです。貴重な節句人形を仕舞いっぱなしに せず、虫干しも兼ね傷みを防ぐという知恵でもあったようです。「大人の雛祭り」 とも言われます。現代では、大人の女性が健康と長寿を願って飾るというのはいかがでしょうか。9月9日だけではなく、菊の咲く10月9日頃まで飾るのが相応しいでしょう。色とりどりの菊の花と共に。 ご家庭で「重陽の節句」を祝う時の行事食と言えば、まず「栗ごはん」があげられま す。この時季に美味しい「秋ナス」を使った料理には「焼きなす」や「煮浸し」がいいですね。また、普段は刺身のツマなどに使われる食用菊を「サラダ」や「おひたし」にしたり、「天ぷら」にしたりするのもいいでしょう。お吸い物の彩りに使うのも素敵です。何と言っても、「菊」はこの日の主役なのですから。最後のスイーツが菊の花をモチーフにした上生菓子であれば最高です。そして、お酒はもちろん「菊酒」で。お好みのお酒に菊の花びらを浮かべて、菊の花のほのかな香りと共に頂くのもオツな飲み方だと思います。 九月の事を和風月名で「長月(ながつき)」と言います。「長月」は日本の旧暦の九月(現在の十月中頃)を指す和風月名です。「長月」と呼ぶようになったのは、夜が段々
長くなると言う意味の「夜長月(よながづき)」が縮まったと言う説が有力です。 他にも、秋の長雨が多い時期である事から「長雨月(ながめづき)」、実った稲の穂が長々と伸びる様から「穂長月(ほながづき)」や「稲刈月(いねかりづき)」と言う異称があります。また、菊の花が咲く季節から「菊月(きくづき)」、木々の木の葉が紅葉する事から「紅葉月(もみじづき)」、夜が長く物思いに耽って早く目覚める事から「寝覚月(ねざめづき)」と言う異称もあります。どの言葉も日本の秋の風情を思わせるものばかりです。しかし、現在の9月と言えば、まだ残暑が厳しく、和風月名とは程遠く、ズレを感じます。 この時期になると、「吾亦紅(われもこう)」や「コスモス」と言った楚々とした秋の風情を感じさせる花々が見られます。「コスモス」は桜のような花が咲く事から、漢字で「秋桜」と書きます。また、独特の花の形をした「彼岸花(ひがんばな)」も見かけるようになります。気候は秋のお彼岸(23日頃)を境に昼と夜の長さが逆転してゆき、暑さが和らぐと言われます。昔から日本で「暑さ寒さも彼岸まで」と言われるゆえんです。 9月には「敬老の日」(21日)や「お彼岸」(20日〜26日)と言った行事があります。「お彼岸」は先祖を敬う日本の伝統文化です。この「敬老の日」や「お彼岸」は家族が集まり、絆を深める大切なイベントになっています。ところで、今年の「中秋の名月」は9月25日です。お団子を供えススキを飾り、月を愛でると言う月見文化も昔から続く日本ならではのものです。そう言えば、9月9日は「重陽の節句(ちょうようのせっく)」です。このことについては、別のブログで詳しくご紹介するつもりです。 さて、それぞれの行事には特別の「行事食」があります。「重陽の節句」では菊にまつわる食べ物、お月見には「お団子」、お彼岸には「おはぎ」と言ったものがあります。 我が家でも、十五夜のお月見には台の上にススキや菊などを飾り、三方(さんぽう)にお団子を乗せて、一服の抹茶も供えてお月様を愛でて楽しみます。お煎茶を教えていた頃には、お弟子さん達と「月見の茶会」をして楽しみました。お彼岸には先祖供養をすると共に、必ずお茶と「おはぎ」を頂きます。 暑い暑いと言っていても、時折の涼風や虫の音に秋を感じる今日この頃です。夜風に季節の移ろいを感じ、夜空の美しさ、月の輝きに目を奪われるのが九月です。実りの秋ももうすぐです。段々と夜も長くなって行く日々、自分を顧みるそのような余裕を持ちたいものです。 昔、礼儀作法を教えて頂いたお煎茶の先生が、次のようなお話をされました。
「日本は明治以降、西洋文化に憧れて西洋家具を輸入ました。今ではどの家庭にもテーブル、椅子、ソファと言った家具があるでしょう。でもそれを使う時のマナーまで導入しなかったのよね。」 つまり、西洋風のテーブルセッティングや椅子の掛け方、室内でのソファの置き方などにもルールやマナーがあるということです。 煎茶道で通常「礼儀作法」と言うと、玄関の入り方、畳の歩き方、座り方、挨拶の仕方などなど、日本家屋での立ち居振る舞いを中心に教えます。しかし、昔の日本の家庭には、当然身につけるべき躾として、立ち居振る舞いがありました。ですから、特別に習いに行かずとも、私は母や祖母から厳しく躾けられて育ちました。特に食卓でのマナーは大事だと言うので、箸の持ち方を始めとして口の開け閉めまで煩く言われたものです。背中を伸ばしての正座はもとより、食事中のおしゃべりなどは許されませんでした。 私の子供の頃は、居間の中心に座卓が置かれていました。現代では多くの家庭でダイニングやリビングにテーブルと椅子が置かれています。ここが、通常暮らしの中心になっています。現代の日本は、建物ばかりではありません。暮らしにおいても和洋折衷が普通です。 ところで、私は日頃の食卓風景の中に、礼儀作法(マナー)の大部分が組み込まれていると考えています。 少し振り返ってみますと、朝を迎え、家族と顔を合わせたら「おはようございます」、テーブルに着き食事を始める時には「いただきます」と、挨拶を交わします。食べ終わったら、「ごちそうさまでした」と感謝の気持ちを伝えます。またテーブルの上では、お箸の持ち方やスプーン・フォークなどといったカトラリーの扱い方、それにもマナーがあります。食事をする時のテーブルの上の器のセッティング(並べ方)がありますが、和食と洋食でも違います。普段の家庭料理、そこにも常に何かしらのマナーがあります。このように、私達が何気なくルーティンのようにやっている暮らしの所作の中に、作法(マナー)があるのです。 お気づきでしたでしょうか? 私は「マナー」をコミュニケーションのツールの一つだと考えています。食事にお招きして、知性豊かなその方のお話の面白さとは裏腹に、食べ方の汚さに幻滅した事が何度かあります。 私はこのブログの中で、暮らしにおけるマナーを、出来るだけ写真も添えてお伝えしたいと思っています。「マナー」は難しいものではありません。「マナー」は一度身につけたら、その人の人となりとなって、自然と品格を上げるものです。 他にも、テーブルセンターやランチョンマットの選択の仕方、良い器選びのコツ、素敵なテーブルフラワーの生け方など、暮らしに取り入れると楽しい事がまだまだたくさんあります。このような事柄についても、ご紹介できたらと考えています。 まだまだ暑い日が続いています。ところで、日本の暦では、8月23日を「処暑」(しょしょ)と言います。「処暑」は二十四節気の一つです。さて「処暑」とは何を意味するのでしょうか。
「処暑」は暑さが終わる時期と言う意味です。この「処」は収まる・止まると言う意味なのです。この時期から暑さが和らぐ頃と解釈するのでしょう。今年も、立秋を過ぎて尚残暑が続いており、どこにその気配がと思われる方もいらっしゃるでしょう。でも、朝夕吹く風に少しばかり秋の気配を感じたりしませんか?夕方にまだ小声ですが、鈴虫やコオロギ、鉦叩きなどの声がどこからともなく聴こえてきます。日本には、「秋声」(しゅうせい)と言う言葉があります。秋の声はどこからともなく聞こえるのです。 「処暑」の期間は8月23日頃から9月6日頃までです。この頃気をつけなければならないのは「野分」(のわけ)、今で言う「台風」です。昔から二百十日(立春の2月4日から数えて210日目)はその厄日として、農家では特に警戒していました。今年の二百十日は9月1日です。昨今は台風が巨大化し、雨も温暖化で海面の温度が上昇したことにより、すぐに線状降水帯を生み、大災害に繋がります。また、二百二十日も同じように台風を警戒する日とされています。ちなみに、今年の二百二十日は9月10日になります。 さて、「春の七草」は「七草粥」でご存じの方も多いと思いますが、「秋の七草」はどうでしょう。 「秋の七草」は萩(ハギ)、薄(ススキ)、葛(クズ)、撫子(ナデシコ)、女郎花(オミナエシ)、藤袴(フジバカマ)、桔梗(キキョウ)です。秋の七草は「春の七草」のように食べられませんが、飾ってその風情を味わいます。と申しますのも、どの花も野にあるもの、しみじみとした秋の風流を感じさせるものばかりです。昔から文学作品に度々登場する「萩の花」。一輪一輪は小さくて地味ですが、特に野に群れてある時は、楚々としていて人目を惹きます。そう言えばこの時期、茶花で思い出すのが「ホトトギス」です。「ホトトギス」にはいろんな種類があります。濃い紫色の花、薄紫に斑点が入ったものなど。昔、私は庭の隅に茶席で活ける為に育てていました。「ホトトギス」とは、花びらに斑点が入っている所が時鳥(ほととぎす)に似ているところから、そう命名されたと言います。「撫子」や「女郎花」は本当に可愛らしい花です。秋を先取りするように、薄と桔梗を竹籠に活けても素敵です。 この時季の旬と言われる食材と言えば、まだ夏野菜も健在ですが、野菜ではサツマイモが登場し、果物ではブドウやイチジクなどが店頭に並びます。「サツマイモ」は蒸して頂くだけでなく、少し甘みが足りない場合は砂糖を加えて「レモン煮」にしたら子供達が喜びました。また私は、砂糖を加えて煮たお芋をつぶし、布巾やラップで小さな巾着に絞って和菓子を作り、お茶会で使っていました。「イチジク」は傷みやすいので早めに食べきる方がいいようです。料亭では蒸して、クズ餡をかけて逸品として出すところもあります。お魚では何と言っても「秋刀魚」(サンマ)です。「秋」と言う字が入っているのですから。この時期から魚屋さんでトロ箱に入った秋刀魚を見かけるようになります。昨今は漁獲高が減って価格が高騰する年が多くなりました。「秋刀魚」だけではありません「イワシ」などの庶民の魚が段々遠くなるようで寂しい限りです。 季節が移り変わる時、夏バテにも配慮しなくてはなりません。「処暑」の頃は心して夏の疲れをリセット致しましょう。どうぞ、体調管理にお気をつけくださいませ。 「懐紙(かいし)」をご存じでしょうか。 和紙で出来た*懐紙(別名小菊)は、茶道では必需品です。茶道ではお抹茶を頂く前にお菓子を頂きますが、*縁高(ふちだか)や菓子鉢から和菓子を取り分ける時に硫酸紙(りゅうさんし:通称ブーブー紙とも言う)を挟んだ懐紙の上に置きます。又、抹茶を飲んだ後に茶碗の飲み口を拭いたり、飲み口を拭った指を清めたり、お茶事の時には器を清めるなど、とても用途の広いものです。 私は、この懐紙やその代わりになるように半紙(はんし)を畳んだものをバッグに入れて持ち歩いています。 レストランで食べ残した美味しいパンやクッキーを持ち帰る時に、この懐紙や半紙を使います。また、口元を隠したいと思う時がありますね。その時にもこの懐紙を使うと優雅に見えます。そうそう、会席料理でお魚の骨を外す時にも頭の方を腰のある懐紙で押さえると、スマートです。他にもちょっとしたお金や小物を人にお渡しする時、懐紙に包んで渡します。メモ用紙の代わりに使う事もあります。 懐紙は平安時代の頃、貴族がその当時貴重だった紙を、身だしなみの一つとして日常持ち歩いた事に始まると言います。そして煩雑な儀式のメモ用紙の代わりとして使ったり、あるいは和歌や漢詩をしたためる為に用いていたという歴史を持っているのです。 私が習った煎茶道に「懐式(かいしき)」と言うものがありました。「懐式」では懐紙を使って様々な折り方を習いました。最初に習ったのは、吉事用と凶事用の折り方です。 日本にはお祝い用としての吉事と、悲しみを表す凶事の折り方があります。一枚の懐紙が折り方一つで吉事用にも凶事用にもなるのです。ちなみに、吉事用では二つ折りにした上側の左肩が高く、右肩が低くなります。凶事用ではその逆、上側の右肩が高く、左肩が低くなります。 また、和菓子を乗せている*「銘々皿」が塗りの場合、黒文字などで塗りを傷つけないように銘々皿の上に懐紙を折って敷き、その上に和菓子を乗せます。この時も普通は、吉事用の折り方をします。仏事などの場合には、凶事用の折り方をします。以前天ぷら屋さんで、凶事用の折り方をした懐紙の上に揚げたての天ぷらを乗せられた時は、懐紙の事をご存じないのだろうと思いながらも、良い気持ちはしませんでした。
懐紙は茶道具屋、デパート 、雑貨店、お土産屋でも扱っています。ネットで探されるのも良いでしょう。半紙はお習字の練習紙ですから文房具店にあります。正式な白色の懐紙だけではなく、カラフルな色付きの物や、干支や可愛い柄入りの懐紙もあります。懐紙と懐紙の間に硫酸紙(茶道具店やデパート等で購入可)を挟んでおくと、水分の多い和菓子を乗せても下の懐紙を汚さずにすみます。 あなたもバックにひと束忍ばせて、周りの方にも日本の小さな文化をお伝え下さいませ。 *懐子…女性用サイズ(縦175mm×横145mm)男性用サイズ(縦205mm×横175mm) *縁高…重箱のような形で和菓子を入れる物 *銘々皿…一人ひとりに和菓子を取り分けて出す為の小ぶりのお皿 私が30代で煎茶道に励んでいた時、宗匠に教えて頂いた話です。
「話を聞く時は、コップの水を空にして聞かなあかん。」宗匠はそう話し始められました。 「コップに水が入っとったら次に入れられる水は少ないやろ。たくさん水をコップに入れようと思うたら、先に水が入っとったらもうちょっとしか入らへんよ。人の話を聞く時は、心を空にして聞く事や。」 なかなか難しい事です。程度の差こそあれ、人は絶えず五感、更に六感まで使って人と接しています。人と対座しているということ自体がある種の緊張の連続です。頭の中では様々な考えが常に錯綜しています。宗匠は、何と難しい事をおっしゃるのだろうと思いました。 幼稚園に通い始めた子供を育てている時の事です。 「子供の話を聞く時は、子供の目線に自分の目線を合わせてから聞きなさい。」と、育児書に書いてありました。でも問題は、その時の母親である私の頭の中です。子供の話を少し聞いただけで、子供にどう話せばいいか、すでに答えを求めて回転を始めているのです。子供は、私に何か言って欲しいと思っていたのでしょうか? ふと、子供が望んでいたのはそのような事ではないように感じました。 あの宗匠の言葉が浮かびました。私の心の中にすでに水が溜まっていたのでは、子供の言葉を本当にすくい取ることは出来ない、と思いました。 「心を空にして、じっと人の話に耳をかたむける」は大切な事です。 by koshin 初めまして。私はKOSINと申します。
人生の大半を大きく過ぎ、ふと立ち止まると、今まで歩いて来た‘時間の道’のようなものが浮かんで来ることがあります。生き続けて行くと言うことを一口で語る事はとても出来ない、と首を横に振りながらもその時々が思い出されます。様々な人に助けられた時の感謝の気持ち、苦しさをやっとの思いで乗り越えた時の安堵の思い、家族や友と喜びあったひとときの幸福感、信頼していた人からの裏切りにあった苦い思い、それぞれが皆、私の時間を作ってきたのだと感動にも似た感情が湧いてきます。 そう思う私は、子育てのかたわら30年以上お茶や礼儀作法を教える仕事を続け、一方で陶磁器の世界に携わり、商品企画やテーブルコーディネートの仕事などをして参りました。 その中で沢山の人との出会いがあり、感嘆したり、教えられたり、触発されたり、考えさせられたりと、人によって学んだ事が多々ありました。家族を初めとし、どのような人であったとしても、人との関わりなしに人生は成り立たない、それは真実です。 これから書き綴ろうとしていることは、日本の伝統に培われた習慣やマナーを現代の暮らしに活かすヒント、煎茶や抹茶の道から私が学んできた事、私が出会った素敵な人の話、知っておきたい暮らしの知恵などです。 ハードな仕事をこなしながら家族を支えている女性、あるいは子育て中でありながら人生を深めている女性、一人で自分の道を模索している女性とそれぞれに生き方は違っても、自分を見つめ、より素敵に生きたいと願うあなたのヒントにして頂ければと願う「希望」を込めた、そんな“ショートストーリー”です。 by koshin |
AuthorKosin(こうしん) Archives
October 2026
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